聖ジェンナーロ宝物博物館

ナポリの伝説の宝
~歴代の王が、権力者が、そして名のない、しかし聖人を深く愛する庶民が聖ジェンナーロに捧げた宝。それは英国王国の宝飾品よりも、ロシア皇帝の宝飾品よりも貴重な物でした。長い間隠されていた絢爛たる輝きを今、ここに見ることが出来ます。~
聖ジェンナーロ宝物博物館ができたのは2003年と比較的新しい。
7世紀にも渡る、しかも数量もクオリティーの面でも世界一の宝を誇るコレクションがそれまで、なぜ世間に知られていなかったのか。
答えは簡単である。
宝は人々に展示されず、金庫や倉庫の中で眠っていたからだ。
ナポリの人々の間では聖人に捧げた膨大な宝があることは伝説として伝わっていた。実際に1931年まで、宗教行列の際に、人々は宝石で輝く司教冠を被った聖人の胸像を担いで街を練り歩いていた。他の聖人の銀の彫像52体も礼拝堂から出て、市民の熱狂を受けていた。聖人に捧げた宝をテーマにした映画も2本制作されている。
しかし、実際の宝がどれほど貴重で豊富であるかを把握している者はごくごく少数であった。
 最近になって、この宝の存在を知り、その後館長となるナポリ出身のジャーナリスト パオロ・イオーリオ氏とナポリに代々続く家系の後継者たちの尽力によって、これらの宝は私たちの前にその輝く姿を現したのだ。
この博物館は国や市、また大聖堂の内部にあるにもかかわらず、教会からの補助をも受けないイタリアでは希少な私立美術館である。
そのユニークな経営方法と観光客動員数が注目されイタリア国営テレビでも取り上げられたほどである。
博物館は本館と聖ジェンナーロ礼拝堂と聖具室からなり、現在600の作品が展示されていて、2年ごとに展示作品の入れ替えが行われている。コレクションの総数は21.610作品に及び、その価値は計り知れないものである。
常設展示には「世界の五大宝物」と鑑定されている「首飾り」「司教冠」「聖杯」「宝石の聖体容器」「司教十字」が含まれている。
特に宝石類のその巨大さにと美しさには驚かされる。
例えば、18キロの金と銀で出来た司教冠(1713年作)には3.964個の宝石が散りばめてあり、そのうちの198個のエメラルドは全て約23,41 x 25,98mmという大きさで、深い緑の光を放っている。また、同じく司教冠の正面下部には一際大きい100カラットのドロップ型ダイヤモンドが光っている。
また博物館は1305年から今日にかけて世界一の銀細工のコレクションを所有している。
ナポリの伝統工芸である純銀を使った彫刻は、その生き生きとした表情で彼らが見てきた街の歴史を語りかけてくるようだ。54体ある彫刻のうち、一番重い彫刻は「聖ラファエルとトビアス」で750kgある。
世紀以上一般公開されていなかった聖具室は博物館設立により、本館と聖ジェンナーロ礼拝堂を結ぶルートとして鑑賞できることになった。
部屋に分かれており、それぞれ全くスタイルの違った造りになっているが、どれも床から天井まで興味深く装飾されている。3部屋全て床だけは高名なナポリの彫刻家ファンツアーゴの手によるもので、美しい室内装飾と共にルーカ・ジョルダーノ、ジャコモ・ファレッリ、彫刻家のディオニジオ・ラッツァーリらの作品を間近で楽しむことができる。
ドゥオーモの内部にある聖ジェンナーロ礼拝堂は聖人の遺物を保管しているだけでなく、世界有数の傑作を鑑賞できる芸術の聖域でもある。
1646年12月にフランチェスコ・グリマルディによって建築された聖ジェンナーロ礼拝堂はドメニキーノ、デ・リベーラ、デル・ランフランコをはじめとする当時の第一級の画家や彫刻家たちの傑作で光り輝いていて、まさにナポリ派バロック様式の頂点を極めている。
時に、この明るい礼拝堂で聖人と語り合っているナポリ人たちを目にできる。
奇跡とは神が起こすものなのか、それとも人間が起こすものなのか、などと言う疑問が湧くが、ここにある芸術作品は奇跡そのものである。
博物館には世界で最も貴重で高価だと鑑定されている「世界の五大宝物」が常時展示されている。
1)    聖ジェンナーロの胸像を飾るための首飾り
1679年、デプタツィオーネは聖人の胸像(銀1305制作)を飾る首飾りをミケーレ・ダートに依頼した。
オリジナルはダイヤモンドとルビー、そしてエメラルドからなるオーバルリンクだった。
その後1929年まで歴代の王や女王をはじめとする権力者から贈られた宝飾品が加わり、現在の形となった。250年間のヨーロッパの歴史がこの首飾りに凝縮されていると言っても過言ではない。
世界で一番貴重で高価な首飾りである。
2) 司教冠(ミトラ) 世界で一番高価な物
1712年 マッテオ・トレリア制作
デプタツィオーネ贈呈
聖人に捧げられた宝石の数は年々増え続けていた。そこでデプタツィオーネはそれらの宝石で飾った司教冠を聖人に贈ることにし、制作をマッテオ・トレリアに依頼する。
しかし、彼はエメラルド、ルビー、ダイヤモンドだけで司教冠を飾ることにし、より大きく、美しい宝石を世界中から取り寄せた。
金、銀、ダイヤモンド3,328個とエメラルド198個、ルビー168個 計3694個
エメラルドは知識を、ルビーは殉教者の血を、そしてダイヤモンドは一番固い物質であることから信仰を意味する。世界で一番貴重な宝飾作品である。
3)    聖杯 
1761年 ミケーレ・ロフラーノ作 (ナポリ王国の宮廷宝飾職人)
金、ルビー、エメラルド、ブリリアンカット・ダイヤモンド 
ナポリ国王、ボルボーネ家のフェルディナンドにより贈呈
4)    宝石の聖体容器
1831年 ナポリ職人工芸
金、ルビー、サファイヤ、エメラルド、ブリリアンカット・ダイヤモンド
フェルディナンド2世により贈呈
イギリスカット・ダイヤモンド 70グレーン(17,5カラット) 16個
イギリスカット・ダイヤモンド 40グレーン(10 カラット) 120個
イギリスカット・ダイヤモンド 20グレーン(5 カラット) 49個
オランダカット・ダイヤモンド 325個
オランダローズ 50グレーン(12カラット)275個
サファイヤ16 カラット16個
サファイヤ  6カラット24個
ルビー 10カラット100個
エメラルド 6カラット8個
金 4 ポンド
5)司教十字
1878年
金、エメラルド、ブリリアンカット・ダイヤモンド
イタリア国王ウンベルト1世 及びマルゲリータ・ディ・サヴォイア王妃より贈呈
即位後初のナポリ訪問の際に聖人に贈られた。有名なピッツァ マルゲリータはこの時に生まれた。トマトの赤、モッツァレッラチーズの白、バジリコの緑でイタリア三色旗を表現し、王妃に敬意を表している。